観る人すべてが“全身でビートルズの音楽を楽しめる”映画だ。 映画を観ていると、制作に関わったすべてのキャスト・スタッフたちがビートルズを正しく理解し、愛しているということがよく伝わってくる。 ビートルズの曲と映像が、無理のない自然なかたちで同化し、並行して展開してく。 特に、4曲目からの「I Want to Hold Your Hand」〜「With a Little Help from My Friends」〜「It Won't Be Long」〜「I've Just Seen a Face」へのスピーディーな展開には、大変に感激した。映像と音楽を完全に並行させたスピーディーな盛り上がりは、知らず知らずのうちに観客を映画の中に同化させてしまうマジックだ。自分は、目の前に広がる映像にくぎづけにされ、流れるビートルズの曲を無意識のうちに口ずさんでいた。 その中でも、「With a Little Help from My Friends」の場面は最高だ。曲の根底を崩さず、よくここまで楽しく編曲できたかと思うすばらしいアレンジである。特に、ギターの裏の入り方がすばらしい。曲のコンセプト・展開に完全に同化したキャストのエキサイティングな演出も大変によかった。この曲を歌ったRingoも観たら、大喜びで拍手を送るだろうと思うすばらしい場面であった。 なぜここまで感激できたのだろうか?この映画の魅力をあらためて考えてみた。 サントラを聴き直してみると、それぞれの曲を歌うキャストたちがビートルズの曲の根底を忠実に守り、素直に歌い表現し、“ビートルズマジック”を再現させている。 それぞれの曲を歌うキャストが、ビートルズの曲の本質を正しく見極め、自分の役にピッタとリとマッチさせ、演出している。 また、ビートルズの曲の大きな特徴である輪唱・ハモリ等も原曲とおりに入れられおり、各キャストが、ビートルズをよく聴きこんでいることが分かる。各キャスに良し悪しがつけられない。一人ひとりが、自分たちの心で、ビートルズの曲の永遠性を目いっぱいに表現している。 曲の詩を各場面のストーリーにうまくマッチさせ、ビートルズの詩によって各キャストのセリフを成り立たせている脚本も見事である。自分としては、普段はほとんど意識することなく聴く“詩の意味”を、あらためて字幕で見て確認することができた。 ビートルズして最後のライブとなる映画「LET IT BE」の屋上でのライブを再現した、「All You Need Is Love」のエンディングは実に見事な演出である。場面、曲の選択とともに、大変に美しい終わり方であった。 一般的に、どのような映画でも面白くないところがあるものだが、この「アクロス ザ ユニバース」は、どの場面においても、それぞれの感激が満ち溢れている。ビートルズの曲を材料とした映画の中では、「I am Sam」以来の秀作である。 ビートルズファンは当然のこと、ビートルズをあまり知らない人たちにもぜひ観てもらい、ビートルズの曲のすばらしさを知るきっかけとなってほしい映画である。